石狩市を中心に山林や都市部に眠る未利用の木を使って、薪を作り、販売する。NPO法人ezorockが運営し、青年ボランティアが主体となって活動しているこのプロジェクト「NINOMIYA」。自ら手を動かし、薪(エネルギー)作りに参加することで、社会人や大学生などの18歳~30代の若者たちが改めて「エネルギーのあり方」について考える取り組みです。
 
 
 薪の売り上げの一部は、青年ボランティアの研修等に活用されており、森林資源について考える次世代の人材作りに努めています。若者が「現場」で林業関係者や行政、民間団体、市民と接することで、若者の自己啓発と実現を引き出すとともに、それぞれが「人と森林の繋がり」や「エネルギーのあり方」について、改めて考えるきっかけを作っています。

 
 
 

 ここでは、「プロジェクトNINOMIYA」の仕組み、「材料を取る」「作る」「使う」について、ご紹介します。
 
 
『材料を取る』
 
 
 山林で精算された木材は搬出された後、建材や紙など様々な用途に利用されますが、根元や枝に近い部分や長さが不足している、太さが足りないなどの材は販売できないため、山林に残されています。こうした材の搬出を重機ではなく、若者たちの人力で回収することにより、残された木を活用することができています。
 
 また、都市部でも街路樹や公園木などから、危険木や更新木として伐採される木があります。これらは手間や廃棄物の問題などからその多くが廃棄されています。そこで、この取組では、木材所有者より有価物として買い取る契約を結ぶとともに、材の移動を木材所有者ではなく貰い手が実施することで、これらの木の活用を可能にしています。

 

石狩市厚田の森林組合より提供をうけた未利用の木。
 
 これらを若者が手作業で運び出します。
斧は危険なものですが、ちょっとしたコツで安全に薪割りを行うことができます。例えば「斧を振り下ろすときにしゃがむ」こと。
もし斧を持つのが難しい場合には、補助をしたり、斧ではない簡単な道具を使うことで、薪割りを楽しむことができます。
 
薪割り後、約二年間乾燥させることで、燃料となる薪が完成します。
 
 
『作る』

 
 
 回収した未利用の木は、青年ボランティアをはじめ、小学生から60代まで様々な人の力によって「薪」というエネルギーに変えられます。
 
 この薪割りには、年間延べ人数600人、イベントでの薪割り体験を合わせると約1000人(2015年度)を超える参加があります。NPO法人ezorockのHPより参加・応募することで、社会人、学生関わらず、薪割りを体験することが可能です。
 
 薪割りの参加者には、作業に取り組んでもらう前に、「なぜ?」薪割りをするのか、充分に理解してもらいます。薪割りが「木を使うお手伝い」「温まるエネルギー作り」「森を持つ人、木を育てる人、木を運ぶ人たちの想いを繋げる」作業ということを理解することで、薪割りという作業から木に対する価値観も変わってきます。
 
 また、薪割りの参加者はみんな初心者です。初めての経験を楽しみ、必死になり。皆で成功・失敗を共有し、上達を目指します。そこには上下関係も年齢差も存在しないコミュニケーションが生まれます。
 

 
 
『使う

 
 

 作られた薪は、薪を作ってきた想いを持った若者たちにより、購入先の飲食店やゲストハウス、個人に直接届けられています。
 
 このプロジェクト「NINOMIYA」は、机上ではないからこそ、「現場での実践」や「社会で役立つスキル」が学べる場です。この薪を買い、使うことによって、若者たちの学び、成長する機会の応援に繋がるとともに、森林保全や温暖化防止に貢献することができます。
 

 
 
 

 
 
このプロジェクト「NINOMIYA」は、若者たちが自発的に手作業で薪作りを行うことで、「互いに成長する」「エネルギーを作り出し、利用する」ということを実現しました。私たちは生活の中でエネルギーを何気なく受け取るものとして捉えていますが、この取り組みのように、身近にあるものを資源に変え、これまでのライフスタイルを見つめ直すという選択も存在します。
 
 エネルギーは私たちにとって非常に身近なもの。作り出すことができなくても、エネルギーの有限性を見つめ、自らのエネルギーの使い方について改めて考えることで、無理のない範囲でライフスタイルを変えていくこともできるのではないでしょうか。

[本件に関するお問合せ] 
NPO法人ezorock・プロジェクトNINOMIYAのHPはこちら  プロジェクトNINOMIYA紹介のHP(石狩市役所)はこちら
 
NPO法人ezorock
住所: 北海道札幌市中央区南9条西3丁目1−7
Tel:011-562-0081 
 

取材協力:プロジェクトNINOMIYA ボランティアコーディネーター  大熊啓介さん