当センター(北海道地球温暖化防止活動推進センター)と函館市が協働し、函館市民に向けて、国民運動「COOL CHOICE」、函館市で実施されている温暖化防止の取り組み「市民ノーマイカーデー」に関するアンケート調査を実施しました。
本調査は、上記の取り組みの認知度や、市民の温暖化防止に関する意識や行動を把握し、函館市における温暖化防止施策の検討を進める上での基礎的な情報として活用することを目的としています。同時に、当センターの目的・役割として、函館市と協働の下、地域における温暖化防止施策の検討支援を進めるとともに、地域の実情や課題の把握を図り、より効果的な温暖化防止への取り組み促進を目指します。
「2030年までに温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減する目標」を掲げ、政府はその達成に向けて、2015年から国民運動「COOL CHOICE」を進めています 。
COOL CHOICEは、温暖化対策に資するあらゆる「賢い選択」(技術、知恵、取り組み等)を多角的に発信し、行政や民間企業など様々な主体と連携しながら、国民一人一人に向けて日常の暮らしの中に「賢い選択」を取り入れるよう呼びかけるものです。この北海道でも、「北海道まるごとCOOL CHOICE大作戦!(北海道新聞など)」や「CO2削減/ライトダウンキャンペーン(五稜郭タワー)」をはじめ、賢い選択を推進する様々な取り組みが進められています。
「COOL CHOICE」開始から約1年が経過した今、北海道の一地域として本調査を実施することで、函館市・北海道におけるCOOL CHOICEの取り組みの進捗状況を把握するとともに、取り組み促進のための手段を探ります。
函館市で2012年から毎年実施されている「市民ノーマイカーデー」は、マイカー利用を控え、環境にやさしい公共交通機関や自転車などの移動を実践する取り組みで、温室効果ガスの排出量削減や健康増進を図りながら、市民の移動に関する考え方の換転を狙うものです。
また、函館市は、将来にわたって持続可能な公共交通網を構築することを目的とした 函館市地域公共交通網形成計画 を2015年に策定し、実施施策として「ノーマイカーデーの推進」や「バス路線網の再編」等を掲げています。
本調査により、ノーマイカーデーに関する市民の意識を把握し、これまで実施した調査結果と比較することで、ノーマイカーデーの効果を計るとともに、参加促進のための手段を探ります。
調査期間 : 平成28年11月~12月
調査対象 : 函館市民1,000世帯(住民基本台帳から18歳以上無作為抽出)
回 答 数 : 330件(回答率 33.0%)
調査主体 : 北海道温暖化防止活動推進センター、函館市
◎ 結果.2 (右図)
① 「省エネ性能やランニングコストを意識したい」
② 「自転車や公共交通機関を利用するようにしたい」
③ 「冷暖房は控えめに燃料・電気代の節約を心掛けたい」
・・・ 右図 ①~③
(結果.1) 中期目標の認知度に比べて、その実現に向けた取り組みであるCOOL CHOICEの認知度は大きく下回っていました。
この結果は、2016年8月に内閣府が全国で実施した「地球温暖化対策に関する世論調査」(中期目標の認知度…62.7%、COOL CHOICEの認知度…28.1%)と同様の傾向を示しており、本調査地をはじめ全国的にも、温暖化対策としてのCOOL CHOICEの認知度が低く、十分な周知と理解が進んでいないと考えられます。
(結果2) 省エネ行動への意識・意向に比べて、その実践について(実際に取り組んでいるか)は減少傾向にありました。
実践していない理由を見ると、「何をしていいかわからない」という回答が最も多く、次いで「効果がわからない」という回答が続いています。これらの結果から、省エネ行動の必要性を多くの人が認識しているのにも関わらず、省エネ行動の具体的な取り組みやその効果が十分に浸透していない状況にあると考えられます。
「COOL CHOICE」の取り組みが地域で根付き、効果的に実践が行われるには、国と地域による連携が不可欠といえます。COOL CHOICEの取り組みとして地域が抱える課題の解決を図ることで、地域事情に則した形でのCOOL CHOICEの発信と、連携による幅広いアプローチが可能になり、地域においてより一層の理解と実践を促すことが可能になると考えられます。
これらのことから、COOL CHOICEが持つ、温暖化防止に関する最新の技術や行動などの情報発信機能や、地域における取り組みのハブ的拠点としての役割を最大限活かし、地域課題に結びつけながらその解決を図ることが、国と地域双方の温暖化防止活動を進める上で効果的だと考えられます。
ノーマイカーデーに関する意識について
①ノーマイカーデーは、マイカーの利用を減らそうと考えるきっかけになるか
②ノーマイカーデーは、環境意識の向上に役立つと思うか
③ノーマイカーデーは、健康増進や運動不足解消に役立つと思うか
(結果.3) それぞれの設問で「そう思う」という回答が最も多いことが示されました。しかしながら、設問①については、「そう思う」に次いで「あまり思わない」が多い結果となり、さらに年齢別の回答を見ると、50代60代においては、「あまり思わない」が「そう思う」を上回っていることから、年配者ほど「取り組みは難しい」とする傾向が示唆されています。
また、2016年度の市民ノーマイカーデーの参加者を対象にした調査結果と、本調査結果(※非参加者と仮定)を比較すると、参加者は設問①において「そう思う」とする回答が多く、「あまり思わない」とする回答が少ない傾向にあります。このことから、市民ノーマイカーデーに参加することは、マイカー利用を減らそうと考えるきっかけになるということが分かります。
(結果.4) 「75歳まで」という回答が最も多く、次いで「70歳まで」「80歳まで」と続いています。年齢別で見ると、回答者の年齢が上がるにつれて、運転を続けられると考える年齢も高くなる傾向が示唆されています。
近年、函館市や北海道地方圏の高齢者率(65歳以上の比率)は、札幌市などの都市圏に比べて高くなっています(函館市…32.1% 札幌市…24.8% 北海道平均…28.9%、2016年度北海道の高齢者人口の状況)さらに国土交通省の調査によると、高齢者の自動車による外出頻度が従前に比べて高くなっており、そのような中で高齢者の自動車による交通事故件数は、平成以降の約20年間で約6倍に増加しています。これは、非高齢者の事故件数がほぼ横ばいであるのに比べて、際立って高くなっています。
こうした現状を踏まえ、自動車等での外出で事故に遭遇するリスクを減らすという観点からも、持続可能な公共交通網の構築が急がれています。そのためには、郊外分散型から拠点集中型都市への変革、過度な車社会からの脱却、そして適切な公共交通網の整備とその利用促進など、様々な課題を地域の理解と協力の下で進めていく必要があります。
これらを進めていく上では、市民ノーマイカーデーのような地域課題を考えるきっかけとなる取り組みが非常に重要な役割を果たすといえます。取り組みを通して、市民に課題を認識してもらい、関心を促すことで、その解決に向けて地域の理解と協力を得ることができると考えられます。これらのことから、市民ノーマイカーデーを実施する上では、市民に向けて取り組みの主旨や意図を具体的に示すとともに、本調査やこれまでに得られた市民意見を参考にしながら進めていくことが重要であると考えられます。
[本件に関するお問合せ]
◎ COOL CHOICE
公益財団法人北海道環境財団
北海道地球温暖化防止活動推進センター
住所 : 〒060-0004 札幌市中央区北4条西4丁目1伊藤・加藤ビル4F
TEL : 011-218-7811
◎ 市民ノーマイカーデー
函館市環境部環境総務課
住所 : 〒040-0022 函館市日乃出町26番2号
TEL : 0138-51-0758