日本の小麦生産量の約6割を担う北海道の中でも、「パン用小麦」の一大産地として知られているオホーツク。
オホーツク東部に位置する網走市では、そのパン用小麦をはじめとする地域ならではの恵みを活用し、地域農業や経済の活性化を図るとともに、その恵みを次世代に受け継いでいくことを目的として、「地産地消※1」や「食育※2」の取組を地域一丸となって進めています。
※1 「地産地消」… 地域で生産された様々な生産物や資源をその地域で消費すること。
※2 「食育」… 様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践できる力を育むこと。
その一つとして2016年度から、網走産小麦100%のパンを地域の小中学校の給食に提供するという「小麦の地産地消給食」を始めています。
「網走は小麦が名産のはずなのに、地域に流通するパンの殆どは外国産小麦のパンなのはもったいない」「美味しい網走産小麦のパンを子供たちに食べてもらいたい」。
そのような農業関係者の声を受け、網走市が同市教育委員会に申し入れ、地域の関係主体であるJAオホーツク網走や小麦生産者、パン製造業者、小中学校などと「網走の食を伝えたい」との想いを共有しながら多くの協議を重ねたことで、この取組が実現しました。
現在は、網走市内の小学校9校、中学校6校で合計3000人程に対して、網走産小麦を使用したパンが週2回提供されています。そのパンは非常に好評で、「しっとりとやわらかくて美味しい」「パンを残す量が減った」との驚きの声が挙がっているそうです。
また、網走産小麦を提供するJAオホーツク網走は、学校給食を担当する管理栄養士・栄養士を対象に、地産地消や食育に関する研修会を年に2・3回実施しています。そのことについてJAオホーツク網走職員販売企画課の内山係長は次のように話しています。
「子ども達に食の良さや大切さを直接伝えられるのは、給食を管理している管理栄養士・栄養士の方々。研修会を通して、網走ならではの地産地消や食育について考えてもらうことで、生産者や私たちの想いも載せて、子ども達に伝えていただければと思っています。管理栄養士・栄養士の方々からも、是非研修会を継続的にやってほしいとの要望を頂いているところです。」
さらに一部の学校では、小麦の生産者が直接教室に出向いて、パンになる小麦がどのように作られているのか、農業や食に関するお話を子ども達に伝えているそうです。
子ども達が地域の産物を認識し、農業への関心を持つとともに食の大切さを学び、食べ残しが減る。そして提供する生産者にも、地域の子ども達に食べてもらうことで生産意欲が向上するといった効果が表れているそうです。「地産地消給食」を通して、子ども達という消費者と生産者が繋がることで、地域に新たな可能性が生まれようとしています。
今回取材させていただいたJAオホーツク網走販売企画課の皆様に、今後の取り組みについてお伺いしました。
「今後はパン以外にも網走の食を楽しんでもらえるよう、学校給食現場の方々をはじめ、多くの人と相談しながら給食のメニュー開発を進めているところです。現在は、網走産小麦を使った麺や、網走産長いもを使ったコロッケなどが計画されています。」
「将来、子ども達が進学等で網走市から離れることになっても、『網走の食べものは美味しかったな』『網走に帰りたい』と思い出してもらえるような給食を、皆で提供していきたいと思っています。」(大澤課長、内山係長、小林さん)
地域で生産されたモノを買い、地域で消費する。この地産地消は地域にとって多くのメリットをもたらす取組です。
例えば…
消費者と生産者の距離が縮まることで、消費者は安心と(食品であれば)新鮮を、生産者はニーズと生産刺激を得ることができる。
地域にお金が回ることで、地域農業や経済の活性化に繋がる。
モノを長距離運ぶ必要がないことから、運搬に発生する二酸化炭素排出量を削減でき、環境にやさしい。
このほか、食育をはじめとする教育的効果など、様々な付加価値を生み出すことが可能です。
この取組を進めていくには、一消費者である私たちが地域の次世代を見据え、地域のモノを応援していく視点(=選択)が必要となります。自身の出来る範囲で「地産地消」を、暮らしの中に取り入れてみませんか。
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オホーツク網走農業協働組合 JAオホーツク網走
住所:北海道網走市南4条東2丁目10番地