網走川河口のほとり、オホーツク海の目前に佇む硝子工房「流氷硝子館」。この工房では、オホーツク海に毎年訪れる流氷をはじめ、この地でしか見られない自然のかたちをモチーフに、「地域とその環境を守る」という想いを込め、硝子工芸品を製作しています。
地域資源のリサイクルガラスを使用することは、天然資源の節約のほか、通常のガラス原料と比べて硝子溶解炉で溶融する時間が短縮できるとともに、資源の地産地消として長距離運搬の必要がなくなることから、二酸化炭素排出量を大きく抑えることに繋がります。
リサイクルと地域資源の活用、2つの要素を重ねて、地域と環境への想いを色濃く伝えています。
また、こうした想いは、硝子工芸品に込められているほか、流氷硝子館の様々な営みの中で感じとることができます。
例えば、硝子製作の過程で大量に発生する熱エネルギーの有効利用。冬季は硝子溶解炉から出た排熱を、館内天井に張り巡らせたダクトを通して、ショップやカフェスペースの暖房に活用しているとのことです。
さらに、取引業者の方々から、配送の次いでに廃棄される予定だった緩衝材や包装紙をいただいて、硝子工芸品の包装に活用していたり、家庭で使われなくなったモノを持ち寄るよう地域に呼びかけ、館内でフリーマーケットを開催していたり。
流氷硝子館としてできる限りの、より良い地域と環境づくりに向けた取組みを進めています。
今回取材させていただいた流氷硝子館の軍司昇さんと軍司知恵子さんに、流氷硝子館の今後の取組みについてお伺いしました。
「蛍光灯から生まれ変わったリサイクルガラスの活用を、北海道や全国の硝子工房にも普及させていきたいと考えています。私たちだけがこのリサイクルガラスを特別なものとして独占してしまうと、リサイクルの意味がとても小さくなってしまうと感じています。どの硝子工房でも当たり前になることで、初めてリサイクル・資源の循環に繋がるのではないでしょうか。このリサイクルガラスを多くの硝子工房が使っていけるように、サポートを進めていきたいと思っています。」(軍司昇さん)
「これまで私たちが進めてきたリサイクル資源の活用や館内での取組みなどをきっかけに、地域の皆で環境について考える場所・機会を、流氷硝子館でつくることができたらと思っています。フリーマーケットもその取組みの一つで、“自身が使わなくなったものをただ捨てるのは『もったいない』”、そんな誰もが感じている原点に立ち返って企画したものです。毎回多くの人がこの趣旨に共感し、家庭で使われなくなったものや、それを加工したものを持ち寄ってくれていて、非常に嬉しく感じています。今後もこのような顔の見えるコミュニケーションができる場をつくり、地域や環境についての想いを共有し、共感の環をつなぐことで、地域の皆で地域の環境を守るという気持ちを高めていきたいと思っています。」(軍司知恵子さん)
地球温暖化が原因と考えられる、様々な異変が起こり始めている今、私たち一人ひとりが何をどう選択し、行動するかが、今後の地域や地球の未来を決める鍵となります。
本事例の流氷硝子館は、硝子工房ができることとして、限りある資源を有効に活用することを選択しています。それは特別なことではなく、皆さまの暮らしの中にも、我が家ができること、○○ができること、大小様々な選択が沢山あるはずです。地域の未来を想い、出来ることから取り組んでみませんか。